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イランが親日国の理由 [未来世紀ジパング 池上彰の謎多き国イラン]

外務省が、2003年11月から2004年1月にかけて、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアの中・東欧6カ国で対日世論調査を実施している。

この調査から、中・東欧6カ国の日本に好意を抱く割合は高く、日本を信頼できる国と考える割合も85%以上に達し、日本は「豊かな伝統文化を持ち、経済力・技術力のある生活水準の高い、信頼できる国」であるとの見方が定着しているということが分かった。

では、イランを含む中東、アラブ中東諸国では日本はどう思われているのか。

日本は日露戦争で、強大だったロシアを破り、当時欧米諸国の植民地支配下にあった中東の人々を大いに勇気づけた。その後、第二次世界大戦では、欧米列強を相手に太平洋戦争を戦う。

敗色が濃くなると、世界中の国々が、「対日本戦に参加しないと、戦後の国連には参加させないぞ」というアメリカの脅しもあり、不本意ながら日本に宣戦布告をした。結局アメリカには負けてしまうが、多数の白人国家を相手にして孤軍奮闘した末、刀折れ矢尽き、原爆を投下されて国は焼け野原となるまで日本は頑張った。まあ、頑張りすぎではある。

この、国家総力戦で灰燼に帰した非白人国家の敗戦国が、敗戦後には経済で奇跡的な回復をし、1980年代になるとアメリカまで叩きのめした。その後景気は停滞するが、最先端の科学技術ではむしろ欧米を引き離し、その差を年々広げている。欧米諸国では、日本の民生工業製品に対抗するのは無理だという、あきらめの声が聞こえるほどになっている。(アメリカの最先端兵器のなかには、日本の工業製品がなければ生産できないものも多い。アメリカ製の自動車は、日本製の金属プレス機で作られている)

アラブ中東諸国では、アメリカを相手に奮闘し、ときに凌駕する日本は人気が高いのだ。

まあそれはいいのだが、日本はアメリカの同盟国で、アメリカはイスラエルの強力な支援者だ。アラブt中東諸国にとってイスラエルは宿敵であるから、日本は嫌われてもいいようなものだが、ひとつの事件が親日を強固にする。

テルアビブ空港乱射事件である。

1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ・ロッド国際空港で、パレスチナに拠点を置いていた日本赤軍3名が自動小銃を乱射した。彼らはパリからの飛行機で、イスラエルのテルアビブ・ロッド空港に到着したのち、税関でスーツケースを受け取ると、中に隠していた自動小銃と手榴弾で無差別攻撃を敢行したのだ。民間人で賑わう空港は血の海で染まった。死亡者は24名、重軽傷者72名。

これを機に、日本人の株は急上昇。アラブ諸国に住んでいた日本人は、町のあちこちで見知らぬ人に握手を求められ、大歓迎を受けるようになった。・・・あまり喜べない。

ともあれ、日本はアラブで人気が高い。イスラムの詩人、ハーフィズ・イブラヒムは第二次大戦後に、イスラム諸国の欧米からの独立とイスラム諸国民を元気づけるため、「日本を称える詩」という詩を書いている。

・日本はかつて、イスラム諸国を北から脅かし続けてきたロシアを日露戦争で破った。
・太平洋戦争では、イスラム諸国の人々を奴隷のように扱ってきたアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの艦艇を日本海軍が沈めた。
・戦争の末期に、神風特別攻撃隊は、アメリカ、イギリスの艦艇に自爆攻撃を加えた。
・ドイツ、イタリアは、早々と降伏したが、日本は、原爆を落とされるまで、最後まで勇敢に戦った。
・日本はイスラムのリーダーだ。

ちょっとこそばゆい。実際には、日本が敢闘できたのは、東南アジア諸国の現地民が協力的だったという側面が強かった。

日本がアラブ中東諸国、イランで人気が高いのには、イスラム教も関係している。日本人の行動規範とイスラム教の行動規範は似ているのだ。

「嘘をつかない」「周囲に親切にする」「貧しき者に施しを与える」ということは、イスラム教が教えるところなのだが、日本人にも同じような伝統文化がある。江戸時代には、長屋の大家は、店子の生活の面倒をみる義務があった。貧しき者に持てるものが施しを与えなければならなかったのだ。

おもてなしの精神は、アラブ世界にも共通する。アラブ諸国は、日本に理想のイスラム教世界を見ているのかもしれない。

>>イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図

 



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