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イラン核協議で5%超のウラン濃縮停止で合意も、イスラエルは反発 [未来世紀ジパング 池上彰の謎多き国イラン]

2006年に国連安全保障理事会5常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランを加えた枠組みで始まったイラン核協議は、2013年11月24日、「第1段階」の措置で合意した。

「第1段階の措置」は、核兵器開発につながる可能性のあるウラン高濃縮活動を制限する見返りに、欧米側が、金や貴金属の禁輸措置を解除するなど、経済制裁の一部を緩和するというもの。

2002年に反体制派が極秘核施設の存在を暴露し、核開発疑惑が表面化した後、欧米との交渉でイランは2003年にウラン濃縮活動停止に同意したが、当時の保守強硬派のアハマディネジャド大統領が濃縮活動を再開。2010年には、20%濃縮ウランの製造を開始し、経済制裁で応じた欧米との対立が続き、交渉は行き詰まっていた。

イスラエルのネタニヤフ首相は、2013年9月の協議再開以来、米国などに安易に妥協しないよう強く求めてきたが、今回の合意に猛反発、一層の強硬姿勢を取るのは確実とみられている。

イスラエルは、潜在的核保有国とされているが、過去にフランスや南アフリカ共和国と核兵器を共同開発してきた事実があり、中東地域で唯一、核拡散防止条約(NTP)に加盟せずに、生物化学兵器や核兵器(400発以上ともいわれている)といった大量破壊兵器を事実上保有している。

加えて、イスラエルは、過去に敵対行動をしていないイラクやシリアの原子炉を、一方的に空爆している。

イスラエルこそ中東のジャイアンなのだ。もちろん、世界のジャイアンはアメリカだ。

曲がりなりにも核拡散防止条約(NTP)に加盟しながら核開発を続けてきたイランを欧米諸国が非難するのは、欧米の政財界にイスラエルが大きな影響力を持っているからだ。筋違いも甚だしい。

今回の合意による措置は、今後6カ月間で実施されるが、アメリカのケリー国務長官が「合意には、イランにウラン濃縮の権利があるとは書いていない」としているのに対して、イランのロウハニ大統領はテレビ演説で、濃縮活動を続けると宣言した。核エネルギーの自給自足体制は、大国を自任するイランの宿願であり「ウラン濃縮をする権利」を放棄するとは思えない。

イランの最高指導者ハメネイ師は20日、協議再開に先立ち「レッドラインは守られなくてはならない」と、核開発の権利を放棄はしない考えを強調し米欧側を牽制している。

イランと盟友関係にあるシリアは、核問題での合意を歴史的と歓迎し「外国の介入や武力によらない政治解決が、地域の安全保障にとって最も効果的だ」との声明を発表した。シリアは9月、米国などが求めた化学兵器廃棄に合意しており、今回の合意は、両国が歩調を合わせて国際的孤立する追い風になるとみられるが、イランやシリアと対立しているサウジアラビアは、イランの影響力の拡大に強い警戒を示していると伝えられている。
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イランが親日国の理由 [未来世紀ジパング 池上彰の謎多き国イラン]

外務省が、2003年11月から2004年1月にかけて、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアの中・東欧6カ国で対日世論調査を実施している。

この調査から、中・東欧6カ国の日本に好意を抱く割合は高く、日本を信頼できる国と考える割合も85%以上に達し、日本は「豊かな伝統文化を持ち、経済力・技術力のある生活水準の高い、信頼できる国」であるとの見方が定着しているということが分かった。

では、イランを含む中東、アラブ中東諸国では日本はどう思われているのか。

日本は日露戦争で、強大だったロシアを破り、当時欧米諸国の植民地支配下にあった中東の人々を大いに勇気づけた。その後、第二次世界大戦では、欧米列強を相手に太平洋戦争を戦う。

敗色が濃くなると、世界中の国々が、「対日本戦に参加しないと、戦後の国連には参加させないぞ」というアメリカの脅しもあり、不本意ながら日本に宣戦布告をした。結局アメリカには負けてしまうが、多数の白人国家を相手にして孤軍奮闘した末、刀折れ矢尽き、原爆を投下されて国は焼け野原となるまで日本は頑張った。まあ、頑張りすぎではある。

この、国家総力戦で灰燼に帰した非白人国家の敗戦国が、敗戦後には経済で奇跡的な回復をし、1980年代になるとアメリカまで叩きのめした。その後景気は停滞するが、最先端の科学技術ではむしろ欧米を引き離し、その差を年々広げている。欧米諸国では、日本の民生工業製品に対抗するのは無理だという、あきらめの声が聞こえるほどになっている。(アメリカの最先端兵器のなかには、日本の工業製品がなければ生産できないものも多い。アメリカ製の自動車は、日本製の金属プレス機で作られている)

アラブ中東諸国では、アメリカを相手に奮闘し、ときに凌駕する日本は人気が高いのだ。

まあそれはいいのだが、日本はアメリカの同盟国で、アメリカはイスラエルの強力な支援者だ。アラブt中東諸国にとってイスラエルは宿敵であるから、日本は嫌われてもいいようなものだが、ひとつの事件が親日を強固にする。

テルアビブ空港乱射事件である。

1972年5月30日、イスラエルのテルアビブ・ロッド国際空港で、パレスチナに拠点を置いていた日本赤軍3名が自動小銃を乱射した。彼らはパリからの飛行機で、イスラエルのテルアビブ・ロッド空港に到着したのち、税関でスーツケースを受け取ると、中に隠していた自動小銃と手榴弾で無差別攻撃を敢行したのだ。民間人で賑わう空港は血の海で染まった。死亡者は24名、重軽傷者72名。

これを機に、日本人の株は急上昇。アラブ諸国に住んでいた日本人は、町のあちこちで見知らぬ人に握手を求められ、大歓迎を受けるようになった。・・・あまり喜べない。

ともあれ、日本はアラブで人気が高い。イスラムの詩人、ハーフィズ・イブラヒムは第二次大戦後に、イスラム諸国の欧米からの独立とイスラム諸国民を元気づけるため、「日本を称える詩」という詩を書いている。

・日本はかつて、イスラム諸国を北から脅かし続けてきたロシアを日露戦争で破った。
・太平洋戦争では、イスラム諸国の人々を奴隷のように扱ってきたアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの艦艇を日本海軍が沈めた。
・戦争の末期に、神風特別攻撃隊は、アメリカ、イギリスの艦艇に自爆攻撃を加えた。
・ドイツ、イタリアは、早々と降伏したが、日本は、原爆を落とされるまで、最後まで勇敢に戦った。
・日本はイスラムのリーダーだ。

ちょっとこそばゆい。実際には、日本が敢闘できたのは、東南アジア諸国の現地民が協力的だったという側面が強かった。

日本がアラブ中東諸国、イランで人気が高いのには、イスラム教も関係している。日本人の行動規範とイスラム教の行動規範は似ているのだ。

「嘘をつかない」「周囲に親切にする」「貧しき者に施しを与える」ということは、イスラム教が教えるところなのだが、日本人にも同じような伝統文化がある。江戸時代には、長屋の大家は、店子の生活の面倒をみる義務があった。貧しき者に持てるものが施しを与えなければならなかったのだ。

おもてなしの精神は、アラブ世界にも共通する。アラブ諸国は、日本に理想のイスラム教世界を見ているのかもしれない。

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イランの核開発問題とイスラエル [未来世紀ジパング 池上彰の謎多き国イラン]

イランの原子力開発は、1960年代後半に、アメリカや西ドイツ、中国、ロシアの協力を得て始まった。

1995年以降は、ロシアの協力によって、100万キロワット級軽水炉の建設を進めたが、2002年8月、反体制派組織の暴露により、大規模原子力施設が秘密裏に建設されていることが発覚。イランの核問題が国際原子力機関(IAEA)で大きく取り上げられることとなった。

イランが、国際原子力機関IAEAに申告することなく、ウラン濃縮やプルトニウムの分離を繰り返していたことが明らかとなったことから、2003年9月、IAEA理事会は過去の活動の解明、ウラン濃縮活動の停止などを求める決議案を採択した。しかしイランは決議を遵守しなかった。

イランは、イランの核技術開発はあくまでも核兵器不拡散条約(NPT)加盟国の「奪い得ない権利」としての「核の平和利用」のためのものだと主張した。これに対して欧米諸国は「平和利用なら秘密裏に行う必要はない」としてイランによる核技術開発の停止を求め、経済制裁を始める。

核開発問題の発生後、イランはまずイギリス、ドイツ、フランスの3か国との合意に基づき、「信頼醸成のため」にウラン濃縮関連活動を停止した。しかしウラン濃縮の停止から1年半以上を経てイランに突きつけられたのは「核技術開発完全放棄」の要求であった。この要求にイランが反発。ウラン濃縮の前段階にあたるウラン転換作業を、IAEAに申告のうえ再開させる。

イランは核技術開発を続け、これまでに3.5%のみならず「20%未満」のウラン濃縮技術を確立し、濃縮ウランの製造のみならず、「第二の濃縮施設(地下施設)」まで稼働させた。

いったん手にした技術はなくならない。現在イランには、「核技術開発の完全放棄」という要求は突きつけられてはいないのである。

問題は、イスラエルとサウジアラビアの姿勢だ。

イスラエルは、イランが核開発を止めない場合、実力行使によってでもこれを止めるという立場を明確にしている。イスラエルは以前にも、イラクやシリアといったイスラエルに敵対的な国々で建設中の原子炉を、予告なく空爆して破壊している。イランの域内覇権への野心に警戒感を抱き続けるサウジアラビアも、イランの核開発を容認しないと公言している。

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